S-NET スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク

Report

2017年10月12日

S-NET福井セミナー プレイベント
~福井×宇宙アイデアソン~

会場:福井工業大学

2017年10月12日、福井工業大学にて福井×宇宙アイデアソンが、S-NET福井セミナーのプレイベントとして行われた。衛星データ利用を、学生の視点から考えるというイベントである。福井工業大学工学部の学生を中心に30人が参加した。

                

本アイデアソンを行う前に衛星データを普段から使っていない学生に対して基礎知識をインプットする必要がある。どのようにすれば衛星データを使えるのか事例を元に説明し、そこから解決したいこと・見たいものが課題となった時に衛星データが役に立つ。

    

そこで今回は衛星データに関する基礎講座を大学側で行って下地を作てってから「解決すべき課題を考える」という手法をとった。

「雪が多くて冬は交通が不便」「遊ぶところが少ない」。福井県は外部の人間から見ると、新鮮な魚介や越前そばなど、美食にあふれる恵まれた場所に見える。しかし住む方々だからこそ、見えてくる不満、つまり解決しなくてはいけない課題がある。衛星データを使って、そういった課題を解決していこうという試みである。

もちろん、雪を少なくするなどの根本的解決は難しい。しかし「雪が多く交通が不便」ということが課題なのであれば、「雪の日でも不便なく外出することはできないか」ということを考えていく。このような解決ツールとして衛星データを利用する。

◆思考して、アウトプットを繰り返す

アイデアソンは、初めから盛りあがりを見せた。適宜グループに振り分けられ、決められたテーマで雑談を行う「アイスブレイク」を行う。このアイスブレイクの時間が非常に短いことが、功を奏した。参加者から「短い」という不満が笑い声とともに上がり、一気に参加者同士が打ち解けた。

進め方は非常にユニークだった。

まず、教室中をぐるりと取り囲むように貼られた写真を眺める。そして「この人はこう思っているのではないか」など、写真のなかに出てくるヒト・モノ・動物の立場に寄り添う。これは、発見の目を養うためのトレーニングとして行われることで、これからのアイデアソンに向けてのウォーミングアップだ。

次に、それぞれの福井の課題を持ち寄り、対話式で意見を述べる。二人一組で、二重の輪になり、時間が来ると次の人と話をする。さきほどのアイスブレイクと同様、強制的に自分の意見を述べなくてはいけない時間だ。「意見を言うのが苦手」「思いつかない」という状況を作らせない仕組みとしている。

最後にグループでのディスカッション。さきほどの対話で磨いたアイデアを話し合い、カタチにしていく。グループはくじ引きで振り分けられている。任意のグループでは発言者が固定しがちだが、それがない。まったくのフラットな状態で、自分の意見を寄せ合い、それをグループの意見としてまとめていく。

そうして最後に「プレスリリース」として発表する。プレスリリースは、自社の商品やサービスを、短い言葉で端的にまとめたものだ。そのため、ユーザーは誰か、どういったサービスか、抜け漏れなく説明するのに最適なフォーマットでもある。

2時間に渡るアイデアソンの後、合計6チームが発表を行った。発表後の得票で多く票を集めた2チームのアイデアが以下だ。

(写真)気象情報・積雪情報などのデータを統合し、安全な道を案内するアプリ (写真)気象情報・積雪情報などのデータを統合し、安全な道を案内するアプリ

福井は全国でも降雪量が多い地方だ。冬の外出には雪対策が欠かせない。その安全を守るアプリをこのグループでは考えた。「雪の中でも安全に外出できるように。気象情報や積雪情報、道路情報などのデータを統合し配信していくサービス」と代表者は説明する。ガイドブックになぞらえて「雪道るるぶ」というネーミングを付けたのもキャッチ―でわかりやすかった。

(写真)熱と光から、長時間停泊する密漁船を感知するシステム (写真)熱と光から、長時間停泊する密漁船を感知するシステム

福井県は日本海の海の幸で有名だ。しかし、日本海側に位置するからこそ、他国の密漁についてのニュースも身近な地域でもある。それを解決したいと考案されたアイデアが密漁船監視システムだ。衛星データで感知した熱と光から長時間停泊する密漁船を発見できないかというものだ。

「海洋資源や安全な航海のための密漁船取り締まりは必須です。その助けになるシステムを考えた」と代表者は言う。

このほかにも、福井の地域財産である恐竜の認知を上げていくためのアイデア、空き家をリサーチするためのアイデアなど、バリエーション豊かなアイデアが出され、発表は非常に活況に満ちたものとなった。

特徴的なのは、どのアイデアもその土地に住む人の日常の課題が浮き彫りになっていたことだ。それぞれ、実装には議論の余地があるだろう。まずは「今これに困っている、だからこういう風に解決をしたい」と声を上げることが大切だ。

◆イベントで衛星データ利用を身近にする

「衛星データについて、今まで考えたこともなかったけれど、いろいろな使いかたが出来そうだということがわかった」

「人の目に見えないものが見えるという衛星データに興味が沸いた」

終了後学生たちからは好意的なコメントが多く寄せられた。

アイデアソン3 課題解決にむけた衛星データ利用を考えるのはほぼ全員が初めてだったが、様々なアイデアが出た

本アイデアソンを開催/運営した一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構研究員の中村さんも「衛星データが課題解決のためのひとつのツールとしてあるということを認識して使ってもらえたらうれしい」と語る。

衛星データはあくまでツールである、というのは先の中村さんの言葉だ。それを身近に感じることが出来るこのようなイベントは、今後、衛星データを多くの人が使えるようになるためにも、効果的な手段のひとつである。

衛星データをどう扱うかというアイデアは、別事業をドメインとする企業や、この日のように学生からも出すことができるはずだ。これから「衛星データ利用」がもっと当たり前になるように。その一歩となるアイデアソンとなった。