S-NET スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク

Report

2017年10月13日

S-NET福井セミナー
~新たなものづくり、共創と継承~

会場:福井工業大学

2017年10月13日、福井県にて、スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(以下S-NET)のセミナーが行われた。さまざまなプレイヤーが集う場であり、それを支援するS-NET。福井県は古くは伝統工芸、現在は鯖江市のメガネや多くの工業製品で有名な町だ。そして現在では衛星や繊維工業で宇宙分野への進出を行う、ものづくりの街である。「新たなものづくり、共創と継承」と題し行われた福井セミナーでは、ものづくり企業による講演で理解を深め、パネルディスカッションにて意見交換を行った。

福井セミナー会場 (一般聴講者とともに学生も多く参加するイベントとなった)
福井セミナー教室 (会場の教室はすぐに満席となった)

宇宙産業政策の新たなビジョン

内閣府宇宙開発戦略推進事務局 髙倉秀和氏 (内閣府宇宙開発戦略推進事務局 参事官 髙倉秀和氏)

開会挨拶として、内閣府宇宙開発戦略推進事務局 参事官 髙倉秀和氏が登壇。「宇宙産業政策の新たなビジョン」について講演を行った。

「宇宙利用は第4次産業革命と言われる。宇宙は開発から利用へと時代がシフトした。出口戦略、つまりマーケットの創造が今後は重要になってくる。」

内閣府が2017年5月に発表した「宇宙産業ビジョン2030」からデータを示し、日本がどのような方向で宇宙ビジネスを創造するべきかを伝えた。

「対応策として、ひとつめは衛星データへのアクセス環境の大幅な改善。ふたつめは、社会モデル実証事業の推進、そして最後に新たなアイデアや事業の奨励・振興が必要だ」とした。

今後の計画について細かな説明を行うとともに、「第4次宇宙産業は衛星データ利用の時代だ。政府主導で衛星データのオープン&フリー化を行っていく」と伝えた。

ビッグデータ時代の新たな衛星データ利用

経済産業省製造産業局宇宙産業室 靏田将範氏 (経済産業省製造産業局宇宙産業室 靏田将範氏)

次に、経済産業省製造産業局宇宙産業室の靏田将範氏が登壇。「ビッグデータ時代の新たな衛星データ利用」について講演を行った。

「近年、衛星から得られるデータは、質と量ともに向上している。AI等の解析技術が進展している現在、衛星から得られたテータをビッグデータの一部として様々な課題解決につながるソリューションサービスが提供されるなど、宇宙ビジネスの可能性は少しずつ広がっている。」

2017年6月に閣議決定をした「未来投資戦略2017」を引用し、そこに位置付けられている宇宙ビジネスの重要性について語った。その上で、本セミナーを開催するS-NETについての役割を説明。S-NETの持つ役割は、新規事業を生み出すネットワークを作ることであり、これまで宇宙と関係がなかった非宇宙の企業と、宇宙業界関係者を融合させ、新しいビジネスを創出していくことだと説明した。

「S-NETは、利用産業分野ごと、地方ごと、それぞれの取り組みを掘り起こす場所だ。そういった場を提供し、ビジネスを支援する場を作る役割を担っている」とした上で「新規事業の効率的な事業化を推進したい」と語った。

開催趣旨説明

CO-WORKS代表 飯島ツトム氏 (CO-WORKS代表 飯島ツトム氏)

開催趣旨については、CO-WORKS代表の飯島ツトム氏より説明が行われた。

「本年度より、S-NETは「Co-Creation」を副題に活動を行っている。共創をテーマに新しいビジネス機会創出の場作りとして活動していく。その上では地方創生が重要になってくる。地方創生を醸成する地域創造拠点間の連携として、S-NETがその役割を果たしていく」

一般聴講者だけでなく、多くの学生も参加していたことから「宇宙ビジネスという未知の世界にチャレンジすると、先端の知識と独創的な発想のヒントが得られる。ぜひこのセミナーを通じて、新しいことにチャレンジする勇気を持ってほしい」と伝えた。

福井から宇宙へ ~県民衛星プロジェクトの挑戦~

株式会社ネスティ 進藤哲次氏 (株式会社ネスティ 進藤哲次氏)

福井県では「県民衛星」と題し、福井県が主導する小型人工衛星プロジェクトを進めている。その代表として、株式会社ネスティ進藤哲次氏が説明を行った。

「県民衛星プロジェクトというが、福井県のみでの利活用を考えているわけではない。まずは福井県独自のものを作るが、いずれは他県でも利活用を考えられるよう、量産体制をとっていきたい。県の特徴であるものづくりの強みを生かし、量産体制に入ったときに受注を受けることが出来るような仕組みづくりを目指す」。

現在開発中の衛星は株式会社アクセルスペースと共同開発を行っている。プロジェクトとのロードマップを示した上で「衛星の利活用で一番大切なのは、安く、早く画像が入手できることだ。より多くの人が使いやすい衛星画像を提供できるよう、このプロジェクトを進めていく」と語った。

宇宙ビジネスへの挑戦

スーパーレジン工業株式会社 勝山良彦氏 (スーパーレジン工業株式会社 取締役 勝山良彦氏)

次に、炭素繊維を中心とした複合材料を用いた成型加工メーカー、スーパーレジン工業株式会社、勝山良彦氏が登壇した。日本の宇宙ビジネスの状況について事例を提示して語った。

「宇宙機器産業は約3000億円といわれる。対して宇宙利用サービス産業は3倍の9000億円。その川下にある、ユーザー産業群となると3兆5000億円の規模があると言われている。このチャンスをこれから生かすことが出来る、伸びしろがあるのが日本の宇宙ビジネスの現状だ。」

その上で、技術力に裏打ちされた自社について語った。同社では世界で初めてCFRPの3Dプリンタの開発に成功したという実績に触れ「宇宙ビジネスを支える技術を提供していくべく、新しい技術開発にさらなるチャレンジをしていく」とした。

宇宙事始め 夢と現実と意義

ヤマウチマテックス株式会社 代表取締役 山内隆嗣氏 (ヤマウチマテックス株式会社 代表取締役 山内隆嗣氏)

ものづくり企業として次に、ヤマウチマテックス株式会社の山内隆嗣氏が登壇した。主な仕事として、メガネ金属や時計バンド、チタンファスナーなどを製造する福井県のチタン材料加工の企業だ。

3Dプリンターでの金属成形をきっかけに、宇宙ビジネスに進出、現在はgoogleの月面探査プロジェクトに参加する株式会社ispaceのHAKUTOへ部品提供を行っている。山内氏は「航空宇宙・医療業界は失敗が許されないために、最も保守的な業界となっている」とした上で「だからこそ、チャレンジするのに意味がある」と言う。

「新しいことにチャレンジするのはとてもエネルギーが必要だが、経営者として後世に遺す人材育成を行うためにも社員が夢を描きながら働くことが出来る環境を作りたい。実績を積み重ねながら、これからも宇宙ビジネスに挑戦していく」

衛星データとクラウドサービス

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社 営業マーケティング本部広域営業部 阿部聖史氏 (富士通クラウドテクノロジーズ株式会社 営業マーケティング本部広域営業部 阿部聖史氏)

続く、富士通クラウドテクノロジーズ株式会社阿部聖史氏は、衛星データプラットフォームの構築についての講演を行った。衛星データはその特性から非常に容量が大きく初期加工に時間がかかる。クラウド上でプラットフォームを構築することで、それを解消していくという試みを提示した。

「欧米では、宇宙ビジネス振興のため、政府と大手IT企業が連携して衛星データのクラウドサービス提供を進めている。ベンチャー企業はこれらを利用し、宇宙ビジネスへの参入を行う機運が高まっている。」

現在までのデジタルプラットフォームを、WEB制作市場、スマホアプリ市場、そして衛星データサービス市場の3つで比較した上で「衛星データがプラットフォームになる時代がまさに今到来しようとしている」と語った。

不動産における衛星データとビッグデータの利用価値

株式会社トーラス 代表取締役 木村幹夫氏 (株式会社トーラス 代表取締役 木村幹夫氏)

ビッグデータの活用事例として、株式会社トーラス代表取締役木村幹夫氏が登壇した。

「宇宙は入口、つまり要素技術については現在までに十分検証、実証されており発展している。これからは出口戦略、ビジネスとしてのマーケットを作っていかなくてはいけない。」その上で、衛星データを利用した空き家感知技術と、不動産相続データを組み合わせたサービスを紹介。「衛星データは単体では意味をなさない。見たいものや課題が明確だからこそ活きてくる」とした。

「衛星データはビッグデータのひとつだ。宇宙ビジネスという気負いなく利用することができれば宇宙ビジネスはさらに広がっていくだろう」と語った。

パネルディスカッション (新たなものづくり、共創と継承)

左から、飯島ツトム氏(CO-WORKS代表)、橋本英樹氏(スカパーJSAT株式会社)、三田村美恵氏(美の里ファーム代表)、進藤哲次氏(株式会社ネスティ代表取締役)、木村幹夫氏(株式会社トーラス代表取締役) 左から、飯島ツトム氏(CO-WORKS代表)、橋本英樹氏(スカパーJSAT株式会社)、三田村美恵氏(美の里ファーム代表)、進藤哲次氏(株式会社ネスティ代表取締役)、木村幹夫氏(株式会社トーラス代表取締役)

ふくいPHOENIXプロジェクトのリーダーであり、福井工業大学機械工学科教授の羽木秀樹氏が、ファシリテーターを勤め、会が進行された。まず、ふくいPHONIXプロジェクトの概要について羽木氏が紹介を行った。

あわらキャンパスに設置している10mのパラボラアンテナをスライドに映し、「福井ではかねてより多くのものづくりが盛んにおこなわれてきた。現在は宇宙へ向けてのものづくりが、この福井工業大学を拠点とし、行われている。福井の地域振興として宇宙を新たな産業にしてブランディングしていく」と語った。

ディスカッションでは「福井県がどのような課題を持ち、衛星データでそれを解決する術はあるのか」についてパネラーそれぞれが意見を述べた。

福井県内で農業を営む、美の里ファーム代表、三田村氏によると「まず、農業は高齢者の従事率が高い。農地管理、鳥獣害被害対策などを、テクノロジーを利用して効率化することはできないだろうか」と、福井工業大学の学生に期待を寄せた。これについては、欧米の事例から農地管理などは衛星データ利用として非常に汎用的であるということを羽木氏が説明。

またブランディングの課題として、三田村氏は「福井のコメをブランド化してさらに高品質なものとして販売することはできないだろうか」と質問。それについては、トーラス木村氏、スカパーJSAT橋本氏、ネスティ進藤氏からさまざまな意見が出た。

木村氏「コメのブランド化は他県でも行っている。画一化した「おいしいコメ」としてのブランドではなく、そのコメがどのような効果を発揮するのかを明示したほうが他との差別化を図ることが出来る」

橋本氏「例えば、糖質制限を行っている方でも食すことが出来るようなコメなど、ターゲットユーザを絞った上での品種改良を行う。他県と差別化していくことが、今後のコメ市場で勝ち抜くためには必要なのではないだろうか」

進藤氏「マーケットから逆算して考えるとブランドのあり方がわかるのではないか。ブランディングとは、今あるものに付加価値を加えた差別化だ。福井県で行っている宇宙ビジネスも、ものづくりという福井特有の技術を、宇宙という新しいマーケットに進出させたことにより可能になったブランディングのひとつだ」

ブランディングを専門とするCO-WORKSの飯島氏は「消費者の心を動かすには、購入した後どのように自分が変化していくのかという意味付けが必要となる」と語った。

羽木氏は「解決したい課題があるというのは、ビジネスを興す上での一番の原動力となる。その課題感をこの場で持ち寄り、話ができるというのは非常に有効な機会である」とまとめた。

まとめ

当日は300席に立ち見が出るほどの盛況を呈した。会場が大学だったことから参加者の半数が学生という、これからの福井のものづくりを担う人材が集まったセミナーとなった。福井県の宇宙への取り組みを、S-NETはこれからも支援していく。

セミナー資料ダウンロード

基調講演資料「宇宙産業政策の新たなビジョン」(2.1MB)

基調講演資料「ビッグデータ時代の新たな衛星データ利用」(3.4MB)

テーマオーナトーク講演資料「福井から宇宙へ ~県民衛星プロジェクトの挑戦~」(1.6MB)

テーマオーナトーク講演資料「宇宙ビジネスへの挑戦」(2.5MB)

テーマオーナトーク講演資料「宇宙事始め 夢と現実と意義」(2.2MB)

テーマオーナトーク講演資料「衛星データとクラウドサービス」(1.6MB)

テーマオーナトーク講演資料「不動産における衛星データとビッグデータの利用価値」(0.8MB)